【姉妹対談vol.1】KIRA CLOSET vintageができるまで

私たち姉妹が気になることを発信する「KIRA CLOSET journal」。
はじめての試みである姉妹対談を公開!
姉が聞き手となり、妹にインタビューしました。

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誠子(以下S):これまで聞いたことがなかったけど、古着やヴィンテージアイテムにハマったきっかけはなんだった?

あきら(以下A):高校生くらいのときに知っていた古着屋さんってアメカジやストリート系みたいなお店ばかりで、当時はまったく興味がなかったし、古着=リサイクルみたいな認識だった。

上京した後、高円寺や代官山の古着屋さんを見ていく中で、ヨーロッパヴィンテージに出逢い、「こんなにかわいい古着の世界があるんだ!」と、衝撃を受けて。

S:へー。ヨーロッパヴィンテージっていろいろあると思うけど、具体的には?

A:特にレースやフラワーパターン。あと洗練された色使いも!

S:あー今も変わらず好きだよね。そこから古着屋を始めようと思ったのはどんな経緯で?

A:古着屋巡りをする中で、「自分もこういう仕事がしたい!」「古着屋さんで働きたい!」って思うようになって、学生のときにバイトを始めたことが、はじめのきっかけだと思う。

漠然とファッションの仕事がしたくて、服飾の学校に行ったから、こんなに早くやりたいことが明確になるなんて思ってもみなかった。それが19歳とかかな。

古着屋で実際に働いてみたら、働いている人たちは、「古着屋やりたい!」って言う人ばかりだった(笑)。だからこんなにやりたい人だらけの中で、ただ言ってるだけではなく、本当にお店を始めるためにはどうしたらいいのかなっていうことをずっとイメトレしながらバイトしてたような気がする。

S:みんなで夢を語り合うとかではなく、現実的に考えていたと。

A:そう、みんなで言い合ってるだけで安心しちゃう感じが嫌だった。たぶん、その頃から協調性はなかったよね(笑)。振り返ってみると、この頃からずっと趣味はイメトレだった気がする。

S:あきららしいね。こういうお店にするというのは、わりと早い段階で固まってた?

A:う~ん、どうだろう。たぶん固まっていたとは思う。私が好きだと思うお店は個人店が多かったから、そのスタイルにしようと。そういえば、気になったお店に行ったら買い物ついでに、お会計をしてもらっている時間を活用してスタッフさんにめちゃくちゃ質問してた気がする(笑)。

普通、古着屋さんとかで質問する内容って、「買い付けはどこに行ってるんですか?」とか、「新入荷はいつですか?」とかなのに、私は、「オーナーさんって何歳くらいの方ですか?」「いつ頃からこういう仕事をしてるんですか?」「何人くらいのスタッフで回してるんですか?」とかだった。今思うと迷惑な客でしかないんだけど(笑)。

いろんなお店に足を運んでリサーチをしていたし、ヨーロッパヴィンテージやUS古着、国産古着を取り扱うお店でバイトをしていくうちに、どの国のファッションにもそれぞれ良さがあって、私はその素材やデザインが流行った背景とか、その土地の文化や歴史、時代背景などを服から学ぶのが好きだということに気が付いた。ファッションの歴史が好きなんだって!

S:そこは今も変わらないよね。

A:うん。いわゆる「古着だからおしゃれだよね」とか、「古着は若い子のファッション」みたいな感覚もちょっと違うと思ってるし、服を買う選択肢のひとつに古着屋さんがあるといいなって。

だから古着特有のダメージが味だとはあまり捉えていないっていうか、ダメージを気にしない人だけが楽しめるっていうのものにしたくないから、キラクロ(KIRA CLOSET vintageの呼称)の服は状態の良さにもこだわってる。

S:状態がいいことは当たり前すぎて、というか、大前提にあるから言ってないところはあるよね。

A:うん、そうかも。お店をオープンさせる場所にしても裏通りをイメージしてたけど、表参道のあの場所になったのは物件が気に入ったから(現在は移転)。もう縁でしかない!

今思うと、何者でもない、何の実績もない、26歳の私に、こんな素敵な場所を貸してくださってありがとうございますって。よく考えたら、恐れ多くてビビるけど、若さってすごいな~って(笑)。

S:オーソドックスな古着屋は、「こういうアイテムを探すならあそこ」「このアイテムならあそこ」みたいな、いわゆる目玉商品みたいなのがあるイメージがあるけど、キラクロにはないよね。

A:うん。アイキャッチー的な商品を置かないのは、今となっては、“あえて”なのかな。「もっとわかりやすくお店の色があったほうがいいかな」と考えた時期もあったけど、「わかりやすさがない、説明しにくいのがキラクロなんだな」って。わかりやすいものがないけど、テイストはずっと変わってないと思う。

S:いわゆるヴィンテージ、古着ってこういうものという、ステレオタイプのお店ではないよね。その中でも意識していることは?

A:う~ん。空気感かな。いいお店って入った瞬間にわかるって言うじゃん。入った瞬間の第一印象みたいなのは常に意識してるし、「あれ、前来た時のほうがかわいかった」って、リピートのお客様に思われたくない、ということはずっと思ってる。

そういう意味では、スペースを埋めるだけの思い入れがない商品や、とりあえずあれば売れるだろうという商品も置かなくなったかな。それって結局、「キラクロじゃなくても買えるよね」ってなるから。

S:トレンドというか、その時の売れ筋と言われるアイテムは、キラクロでは売れなかったりするよね。

A:ほんとそれ!たま~に仕入れてたときもあったけど、お客様の反応を見ていると、キラクロにトレンドを求めてないなって。

私自身、有名店で働いていたとか、バイヤーを何年やっていたというバックボーンがあるわけではなかったし、いまだに何者でもないと思ってるから、作り込まず、やりながら“キラクロっぽさ”っていうのを見つけていった感覚。

S:そのキラクロっぽさを説明するのは難しいんだよね!?

A:そう!気になったらぜひ見に来てくださいっていうのは、オープン当初から変わらず、今も思ってる(笑)。

S:そこを教えてほしかったりするんだけどね(笑)。

A:だよね……(笑)。「言葉での説明より、感覚を楽しんで!」と思ってるところはある。いろんな色の商品が並んでるお店に入ったときのワクワク感や、自分サイズのアイテムに出逢ってしまったときのビビビッと感を大切にしてる。それは、私が古着にハマるきっかけになったヨーロッパヴィンテージに出逢ったときの衝撃やワクワク感が今も残ってるから。

だから、さっき言ったように、「前のほうが良かったよね」という、過去のキラクロにだけは負けたくないという思いは強くあるかな。

S:新しい武器を取り入れるとかではなく、今あるものをアップデート、アップグレードさせるって感じだよね。

A:そうそう、磨いていく感覚。

買い付けも売るために大量に仕入れたいっていうよりは、「こんなにかわくて素敵な服が古着の山に埋もれてなんて!」「1枚でも多くの古着を救出したい!」という気持ちでやってる。

お直しすることもそうだけど、基本的にはキラクロの商品は時代に合わせて手直してたりもしていて、今あるものを循環させたいって気持ちは年々大きくなってる。

S:循環というのは、オープン当初から思っているところでもあるよね。

現代においては個人にフォーカスした接客が当たり前になってるけど、例えば、パーソナル診断をしてその人に合わせた化粧品を提案してくれるとかもそうだし。ただ、キラクロにおいてはずっと個人にフォーカスした接客。

A:うん。そもそも扱ってる商品が1点1点違うんだから、サイズだってひとつしかないわけで。さらに、似合う、似合わないもある。その中でビビビッときた、シンデレラのガラスの靴のようなモノを提供したい。モノも人も一期一会だからね。

そう考えると、今の予約制の営業スタイルは、本当に自然な流れだったよね。街の移り変わりを肌で感じながら運営していた10年間という店舗営業を経て、よりキラクロに合ったスタイルに変えたって感じで。

私自身のことで言うと、今まではお店を中心に自分の人生が回ってたけど、今は自分の人生の中にお店を取り込んだって感覚。そうゆう働き方になったから、廃業とかないと思う(笑)。

S:私は一番近くで見ていて、運営スタイルは変わったけど、考え方も大切にしていることも変わらないっていうのがけっこう重要だと思ってる。

こんなに移り変わる時代において、流されることもなく、考えることはあったとしても迷子になることはない。軸がぶれないというか……。それは本当にブラボーだと思ってる。

A:いわゆるゴール設定がないだけかもしれないけどね。それがいいところでもあり、悪いところでもあるような……。

S:それがあきらであり、キラクロの在り方ってことだよね。

 

 

 

KIRA CLOSET journal
木川誠子