私たち姉妹が気になることを発信する「KIRA CLOSET journal」。
今回は、姉妹と長年の付き合いがあるライターの“宮氏”を聞き手に
ここ最近の話など、姉妹対談をしました。
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お店を10年間続けて、ふたりの中にも変化が生まれた
―前回までの対談を読むと“お店の移転は結果的に必然”だったように感じたけど、前から移転は考えてた?
あきら(以下A):私はとにかくお店がやりたかったから、時代が変わっていく中でも店舗は10年はやろうと。表参道のあの場所もあの物件もすごく好きだったけど、長く続けていると契約条件も、私自身の考え方も変わってきたというのが一番大きかったかな。
ちょうど10年目が東京オリンピックの年だったこともあって、せっかくだからその雰囲気を味わってから移転について動き出そうと考えていたんだけど、コロナになったことで前倒した感じ。
―コロナ禍はひとつのきっかけだったけど、移転のビジョンはその前からあったんだ。
誠子(以下S):そうそう。けっこう前から意外とそういう話はしていて、選択肢を持っていたから、すぐに行動できたと思う。ただ、決めて3ヶ月後に引っ越し予定だったけど、ぎりぎりまで物件が決まらなかったよね?
A:そう!ちょーぎりぎり(笑)。今までは見せ方としてお店が9割で、お直しとか木川食堂とかが1割くらいだったけど、移転後はそのすべてを同じバランスで見せていきたいと考えていたから、新しい物件は広くなるもんだと思ってて。場所も代官山や渋谷で、一軒家とかの広い物件を中心に見てたところもあって。
でも全然スムーズに進めなくて、動くタイミングは絶対間違ってないと思ってたから、「ということは、条件が違うのかも……」と。で、そのときに、「なんで広い物件にこだわっていたんだろう?」と思って、条件変えて探してみたときに、原宿の今の物件が出てきたんだよね。
原宿という立地はまったく選択肢になかったけど、この物件がどうしても気になるからとにかく見に行こうと。実際に見て違ったら諦めもつくし、とか思っていたら、内見に行って即決!
移転先は即決!この場所に呼ばれた感覚
―前のお店の場所も似たようなエピソードで決まったような……?まったく考えていないエリアなのに、ギリギリで突然出てきて、見たら即決。
A:確かに(笑)。渋谷や代官山ではなかなか進まなかったのが、この物件に決めた途端スムーズに進んだから「この場所に呼ばれたんだな」と思ってる。原宿のど真ん中だけど、原宿っぽくなくて穴場的な感じだし、来た人が自分だけの時間を楽しめる場所になっているのがすごくお気に入り。
S:あきらにはあきらのタイミングがあって、移転のことに限らず、私の感覚では「決めるまでが長くない?」と思うことがたくさんあるけど、物件運とか、人を見る目とか、何かを見る目みたいな、自分に合うものを引き寄せる力はむしろ人よりあると思う。お店のことに関しては、最終的に決めるはあきらだと思っているから、私はただ、あきらのタイミングを待つだけ。
A:横でいちいち言いながらね。
S:それは言うでしょう(笑)。
A:言われ続けている自覚はあるよ。誠子ちゃんに限らず、人に言われたことは、例えば、何年後かに「あれってそういう意味だったんだ」ってハマる瞬間がある。だから、自分のタイミングでしか動かないかもしれないけど、人の話はちゃんと聞いてるし、覚えてる。
S:そのハマる瞬間を待って、私はいつでも動けるようにしている感じ。
―移転してから、そういう姉妹の関係性は変わってきた?
S:あきらは確実に“熟成”したよね。フランスにも行けないし、積極的に誰かと会う状況にもならないから、これまで当たり前だったサイクルから外れたから。
A:それは私だけじゃなくてみんなそうだよね。でも私が違ったのはそんな中で「何か動かなきゃ!動いていなきゃ!」みたいな欲が全然なかったこと。世の中がどうっていうことより、自分自身にフォーカスしながら、スローライフを楽しんでた。だからストレスも全然なくて心身ともに、本当にヘルシーになった。
S:それはわりと大きなポイントで、コロナ禍は全世界が同じような状況になって、個人のポテンシャルにフォーカスされた期間だと私は思ってる。自分の内側に目を向けたときに、ヘルシーになるのか、バランスを崩すのか、その人のもともとのポテンシャルやそれまでの生活スタイルの結果だと思うから。自分の人生に自分で責任を取れているか。そんなことを前は考えなくても生きていけたけど、そうもいかなくなったってことなんだと思う。
あきらはもともと、自分のスタイルがしっかりとあって、そういう内側に向かっていたものが、より内側に向かったんだから、“熟成”以外の何物でもないと思う。
移転後、適度な距離感ができてふたりの関係性も自然と変化
―“熟成”のおかげか、今までは自分のやっていることを続けていれば言葉にしなくても伝わる、と考えていたのが、最近は自分で発信していくように変わった気がするけど。
A:そう思います!(笑)というか、言葉にしなくても伝わるって思ってたんじゃなくて、自分の考えや感覚を言語化できないから、話すより動く、みたいな感じでやり続けてただけ。でも経験も積んで、年齢的にも見られ方が変わってくる中で、「やっぱり言葉で伝えるということはやっていかなきゃダメなんだな」というマインドにはなってきた。
そもそも根底に、私がやっていることって普通に誰でもやっていることだと思っていたから、いちいちアピールする必要がないと思ってたというのも……。でも、「何かが違うよね」という仕上がりになるということは、そこにセンスがあるということ。特別なことはしていないという気持ちと、そこにセンスがあるということが、全然一致しなかったんだけど、それがじわじわと、ようやく重なってきたところもあるかな。
S:私があきらを一番近くで見ていて思うのは、本当に自分のペース、タイミングでしか動かないこと。それは本当にすごいと思うし、一方でイラだっていた部分もある。
表参道にお店があったときは、私自身もそこで作業をしていたこともあって、いろんなことが見えるから気になることがたくさんあって、それをすべて言葉にしていたところはある。だけど、原宿に移転してからは、自宅で作業することが増えたから適度な距離感が生まれたかなと。だから、私自身も子離れというか、妹離れしたような感覚に近いかも。
同時に、お店を10年間続けてきた中で、あきらが自分の才能(センス)をやっと自覚してくれたから、それも妹離れにつながったかな。
キラクローゼットの世界観を多角的に表現していきたい
―原宿に移転して、変わったところは?
A:完全予約制の営業スタイルになって、お客さんにはわざわざ予約していただくというアクションがひとつ増えたわけだから、足を運んでくださった方が心地よく過ごせる時間や空間を提供していきたいと、より思うようになった。最近はレジもセルフレジとか、便利になっていく中でコミュニケーションがどんどんなくなってきているけど、私はそのコミュニケーションに楽しみを見出しているタイプだから、キラクローゼットもそうでありたいと思ってる。
それプラス、今まで以上にお直しにも重きを置きたいかな。たくさんモノを売るとか、消費していくことに正直、あんまり興味がなくて、本当に気に入っているものを長く使ってほしいと思っているから。新しい営業スタイルになって、そういう比重の変化は大きいと思う。
S:あと、木川食堂もね。でも、木川食堂だって、別にレシピを提案することがしたいわけではないから。ヴィンテージショップが表現するフードの世界というか、全体のコーディネイトも含めてやっていること。その世界観を本質的に理解してもらえるようにしていかないと、とは思ってる。
―洋服が軸にあるけど、ヴィンテージショップの枠を超えて、その周辺にある暮らしとか、ライフスタイルとかの世界観を体現する空間として、今のお店があるってこと?
A:お店で食事ができるわけではないけど、そういう感じかな。
S:表面的ではないことをやっていこうと、より思うようになったってことだよね。
>>>姉妹対談vol.3に続きます。
執筆/宮崎新之
撮影/濱田加奈子(フードフォト)